データえっせい: 専攻別にみた大学教員の構成変化

このような輩が大学教育の4分の1を担っていることは問題を含んでいると思いますが,それへの言及は後にして,もう少し分析を掘り下げてみましょう。上表のような大学教員の構成は,文系と理系ではかなり違うのではないかと思われます。私は,10の専攻系列について,同じ統計をつくってみました。

 結果を一覧表ないしはベタな帯グラフで示すというのは芸がないので,表現上の工夫を試みました。横軸に本務教員,縦軸に職なし非常勤教員の比率をとった座標上に,各専攻系列の2時点の数値を位置づけ,線でつないでみました。矢印の始点(しっぽ)は1989年,終点は2010年の位置を表します。


 全ての専攻が,右下から左上ゾーンへと動いています。まるで,鮭(サケ)の川上りです。このことの意味はお分かりかと思います。専攻を問わず,本務教員率の減少,職なし非常勤教員率の増加がみられる,ということです。

 こうした変化が最も顕著なのは,赤色の人文科学系です。この20年間で,本務教員の率は51.9%から34.3%へと減り,代わって,職なし非常勤教員の比重が21.6%から55.1%へと激増しました。この専攻では,教壇に立つ大学教員の半分以上が,不安定な生活にあえぐ職なし非常勤教員です。

 図の点線は均等線であり,この線よりも上にある場合,本務教員よりも職なし非常勤教員のほうが多いことを意味します。言葉がよくないですが,人文科学系と芸術系は,この「三途の川」を渡ってしまっています。私が出た教育系は,あとちょっとというところです。今度,『学校教員統計調査』が実施されるのは来年(2013年)ですが,どういう事態になっていることやら。おそらく,上図のような「恐怖の川上り」がますます進行していることでしょう。

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